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松竹座・七月大歌舞伎 夜の部 [舞台]

7月24日(土)

5月の團菊祭に続いての大阪遠征。ま、遠征といっても大阪は実家なので帰省を兼ねるが。
7月の松竹座公演にくるのは2年ぶりかな。
東京も暑いけど、大阪も暑い。昼間ちょっと外を歩いただけで意識が遠のきそう。

「関西・歌舞伎を愛する会 結成三十周年記念」の公演だそうである。
番付を買ってみると、第1回からの公演を振り返る記事があって、記憶をたどるとどうやら私が最初に観たのは第11回のよう。20年前と言うことになる。といってもその頃は今ほど熱心に歌舞伎を観ていたわけではないから、毎年は観ていないようだし、観ても昼か夜かどちらかだけだったが。十三代目の仁左衛門の「新口村」孫右衛門の写真が懐かしい。そうそう、あの頃はまだ中座だったねえ。

一、双蝶々曲輪日記(ふたつちょうちょうくるわにっき)
  井筒屋   
  米 屋   
  難波裏   
  引 窓     
南与兵衛後に南方十次兵衛  仁左衛門        
藤屋都後に女房お早  孝太郎            
濡髪長五郎  染五郎           
山崎屋与五郎  愛之助             
藤屋吾妻  春 猿             
三原伝造  段治郎             
平岡丹平  猿 弥              
おせき  吉 弥              
母お幸  竹三郎             
放駒長吉  翫 雀

「角力場」と「引窓」だけの上演がもっぱらで、他の場は文楽の通しと、7年前に国立劇場で「米屋」「難波裏」は観ているが、最初の「井筒屋」は全くの初見。
 
「井筒屋」では、後に十次兵衛の女房お早となる遊女都と、その朋輩吾妻と与五郎が中心。「引窓」では台詞に出てくるだけのお早の前身が見られることで、全体が解りやすくなる。
騒動の発端となる場面だが、全体的に喜劇調ではあり、テンポ良く話が展開する。
しかし、いかに悪人とはいえ、嫌な男(山崎屋権九郎)に濡れ衣を着せて指まで落とさせるというのは、いささかブラックに過ぎる気はする。
 
愛之助がいかにもつっころばしの若旦那の風情。出てきたとき、仁左衛門かと思った。
春猿に色気と可愛げがある。

「米屋」「難波裏」
濡髪長五郎と放駒長吉の出入りから、長吉と姉のおせきの姉弟愛に話が移っていく。
染五郎の長五郎と翫雀の長吉というのは、逆でもつとまりそうな配役。翫雀が粋がっている不良少年といった様子を若々しく出した。
吉弥の姉おせきに情がありなかなか。

「引窓」
いつ見ても泣ける、心が温かくなる演目。好きだなあ、この話。
仁左衛門の与兵衛が、侍になって家に帰ってきたときのうきうきした様子が何とも可愛げがある。精一杯武士らしく振る舞って、母と嫁にことの成り行きを語るところが、うれしくてたまらないという表情に愛嬌があふれるのがこの人らしい。
客が帰った後、母と嫁の様子がおかしいと思いつつ、二階に濡髪がいるのに気づいてはっと決まるところの間合いがさすがにうまく、母の頼みから事情を悟り、「何故ものをお隠しなされます」と問うところに、継子の切なさがにじむ。後は、母の意に沿うように濡れ髪を逃そうとする味な計らいに優しさと人情味が見えて、さすがに立派。

染五郎の濡髪も、一目母に会いに来た息子の切ない心と、義理を立てて十次兵衛の縄にかかろうとする律儀な様子をきっちりと見せて上々。

孝太郎は、「井筒屋」でははんなりとした遊女の風を見せ、「引窓」では夫と母に尽くす心優しい嫁の様子がよく出て、可愛げもあってなかなかの出来。

竹三郎も実子と継子の間で苦悩する老母の切なさを出して泣かせた。

関西・歌舞伎を愛する会 結成三十周年記念
二、弥栄芝居賑(いやさかえしばいのにぎわい)
  道頓堀芝居前
仁左衛門以下、幹部俳優がそろっての芝居風の口上といったところ。団子売りに扮した愛之助と孝太郎が餅を振る舞うという形で手ぬぐい撒きも。
口上では仁左衛門が「始めの頃は客が入らなくて苦労した、今の盛況は夢のよう」と語り「大阪でも1年12ヶ月どこかで歌舞伎をやっているようにしたい」といっていたが、いつか実現するだろうか..。
そもそも、そういう仁左衛門自身、今は住まいは東京だし、大阪に住んでいる役者の数自体激減している今、毎月の上演が物理的にも可能かどうか、と考えてしまうのである。

三、竜馬がゆく(りょうまがゆく)
  風雲篇             
坂本竜馬  染五郎            
武市半平太  愛之助            
西郷吉之助  猿 弥           
寺田屋お登勢  吉 弥             
おりょう  孝太郎

以前歌舞伎座で上演したものから、中岡慎太郎が出る前半部をカットして、武市半平太が登場する場面に差し替えた形。愛之助じゃ慎太郎には向かないと思ったか。でもこれだと、おりょうの出番が少なくて、彼女の人柄がちゃんと伝わらない気がした。

染五郎の竜馬はすっかりなりきっていて、誠実で真っ直ぐで、でもどこか茫洋としてつかみ所のない様子をうまく出した。
愛之助の半平太に理論派の雰囲気。
猿弥の西郷がなかなかどっしりとした雰囲気で、メークも手伝っていかにも西郷さんという感じ。
孝太郎のおりょうは、はつらつとして当時としては型破りな女の様子をがんばって出していたが、この役は亀治郎の方が向いていたかな。
吉弥のお登勢が懐の深い情のある女将の風情。

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終演後。開演前は暑すぎて写真を撮りに立ち止まる気にもなれず(笑)。
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