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團菊祭五月大歌舞伎・夜の部 [舞台]

5月5日 松竹座

昼の部に引き続いて通しで観劇。
一日中こもっているのも何かと思い、入れ替え時に外へ出てみたが、祭日で凄い人。近くの心斎橋筋は、昔は老舗のお店も多い商店街だったが、今は見る影もなく若者向けのチャラチャラした店ばかり。早々に引き返して、松竹座近くのスタバでコーヒーを買って戻る。

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2階のロビーに團菊の胸像が飾ってあった。確か歌舞伎座の2階にあったもの。胸像までお引っ越しか、とちょっと可笑しかった。

一、本朝廿四孝(ほんちょうにじゅうしこう)
  十種香             
八重垣姫  時 蔵             
武田勝頼  錦之助             
腰元濡衣  菊之助            
白須賀六郎  萬太郎             
原小文治  権十郎             
長尾謙信  團 蔵

なんかねえ、何度誰で観ても面白いと思えない演目なんだよね。でもよく上演されるってことは人気があるんだろうから、単に私の趣味に合わないんだろうと我慢していつも観るんだけど。

三大赤姫の一人の八重垣姫は時蔵。さすがに美しく品があって、おっとりとしたお姫様らしい様子がこの人にはぴったり。でもこのお姫様って、結局恋に恋していたのが、本物の勝頼が突然目の前に現れて、見境なく突進して行っちゃうという、ある意味浅はかなところもあるわけで、そう言うお馬鹿なお嬢さん、という雰囲気が時蔵にはない。(いや、実を言えば、玉三郎にもなかった。そもそもこの解釈が間違っているのか。。?)なので、今初めて出会った勝頼のために父親が大事にしているお宝を盗もうと決心するのが説得力がないのである。だって分別ある人なら、待てよ、そもそもなんで勝頼が生きてここにいるんだ、と思うはずじゃない?。。。などとイライラしながら観ているうちに話が進んで行くんだなあ。

錦之助の勝頼も品があって、偽の勝頼の死を悼む様子に憂いがあり、若衆のような色気もあって美しい。
菊之助の濡衣は、恋人を亡くした悲しみを見せ、姫と勝頼の間を持ちつつも、スパイとしての役目も忘れない気丈さを凛とした美しさの中に見せて上々。
團蔵の謙信は、いつもの三枚目敵の雰囲気が見えて、老獪な謙信の大きさが薄いのがやや辛い。
萬太郎がきびきびとした動きを見せてなかなか。
権十郎も手に入った様子。

二、銘作左小刀
  京人形(きょうにんぎょう)
            
左甚五郎  三津五郎            
京人形の精  菊之助              
井筒姫  巳之助              
奴照平  秀 調              
おとく  萬次郎

生の舞台では初めて観たかも。名人左甚五郎が作った人形に魂が入って動き出す…。という伝説がもとの舞踊劇。
三津五郎の甚五郎が、粋でいなせな職人の風情があって、踊りの部分はもちろん小気味よく見せてさすがに上手い。
菊之助の人形の精も、ぎくしゃくとした人形の動きから、懐に鏡を入れられて急にしとやかでなめらかな女の動きになるかと思えば、鏡が落ちるとまた男のようながさつな動きになる、という変化をコミカルに見せて面白い。
萬次郎の女房おとくが、甚五郎とのやり取りで笑わせる。
突然井筒姫と奴が出てくるので、ストーリーがよくわからないのだが、巳之助がやや物堅いが品のあるお姫様の様子で綺麗。この人は立ち役も両方やれそうだな~。
最後は甚五郎が捕り手相手に左手一本での立ち回り。ノミやかんななど大工道具を次々に使っての動きが面白く、菊五郎劇団らしい粋な立ち回り。

三、梅雨小袖昔八丈
  髪結新三(かみゆいしんざ)
  白子屋見世先より   閻魔堂橋まで             
髪結新三  菊五郎             
手代忠七  時 蔵             
下剃勝奴  菊之助           
白子屋娘お熊  梅 枝           
加賀屋藤兵衛  高麗蔵             
車力善八  秀 調          
白子屋後家お常  家 橘          
家主女房おかく  萬次郎            
家主長兵衛  三津五郎           
弥太五郎源七  團十郎

團菊の顔合わせでのこの演目は初めて観たような気がする。
菊五郎の新三は、白子屋店先では言葉巧みに忠七を焚き付ける様子が、いかにも人の良さそうな振りをしているのが上手い。
それが永代橋で態度を豹変させて忠七を痛めつける姿に凄みがある。
長屋では源七相手にいっぱしの悪の顔を見せながら、家主にはやりこめられる様子を、悪人ながら愛嬌のある風情で見せるのがさすがに粋な雰囲気。世話物の悪党は、変に重くなっちゃいけない、というお手本のような出来。

家主の三津五郎は老けメークで一瞬誰だかわからなかったが(笑)、強欲でしたたかな家主を面白く見せた。まあさすがに老獪な味というのはまだまだだが。でもまだ三津五郎にはこういう老人役はやってほしくないけどなあ。
ここでも萬次郎と夫婦で、萬次郎も亭主ともどもの欲張り婆の意地汚い様子が上手く笑わせた。

團十郎の源七が、顔役の親分らしい貫禄と懐の深い様子があり、しかしいささか落ち目の焦りも見せて上々。
菊之助の勝奴も軽妙な味わい。
時蔵の忠七、梅枝のお熊、家橘の後家らまわりも揃う。
高麗蔵の加賀屋と秀調の善八は逆でもいいような。

昼の勧進帳に夜のこれと團菊祭らしい演目が並んだ今月の舞台。関西の歌舞伎ファンも江戸歌舞伎を堪能できて喜んでいることと思う。来年も團菊祭を大阪でやるかは知らないが。
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