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壽初春大歌舞伎・夜の部 [舞台]

1月18日 歌舞伎座

劇場に行ったら、3,4月の公演のチラシがありました。両月とも三部制なんですね。そして4月の最後の演目は「助六」。う~ん、やっぱり、というべきか。最後は賑やかに晴れやかに、ということでしょう。3月しか配役は出ていませんでしたが、大顔合わせが続くようで楽しみですが、若手の出る幕が文字通りなさそうなのは良いんだろうか。。。いよいよ終わりが見えてきたようで寂しくもあり。。。

一・春の寿
魁春の女帝、梅玉の春の君、福助の花の姫
女帝を勤めるはずだった雀右衛門は残念ながら休演。聞くところでは翌日から出演されているそうで、一日違いで見逃してしまってすごく残念。でも京屋さんがおそらく現歌舞伎座最後の舞台にお立ちになれたのは、うれしいこと。
梅玉は王朝の公達の装いがよく似合って気品溢れる様子。福助もここは品良くおっとりと。
女帝は後半の登場で、チラシには3人の名前しかなかったが、友右衛門、松江、高麗蔵に隼人、種太郎らも登場して女帝を盛り立てる。雀右衛門を想定しての振り付けなので、あまり大きな動きはないが、魁春も美しく気品のある様子で、正月らしい艶やかな一幕。

二・車引
芝翫の桜丸、吉右衛門の梅王丸、幸四郎の松王丸、富十郎の藤原時平、錦吾の金棒引藤内、錦之助の杉王丸

三兄弟と時平公の4人の平均年齢がおそらく史上最高(笑)なんじゃないかという大顔合わせ。芝翫と富十郎は初役というのが意外。

吉右衛門の梅王丸が良いのは期待通りで、荒事らしい力漲る様子がそれはそれは立派。隈をとった顔も勇壮だし、何より張りのある声が良い。梅王丸って、初めは刀を2本しか差していないのに、いったん引っ込んでまた出てきたときは3本に増えてるのね。それも長~いのが。「暫」ほどじゃないにしても、あれを持って動くのは大変だろうなあ。去年の「対面」の五郎も素晴らしかったけど、この梅王丸も今の役者の見本のような立派さ。車に乗っているのが時平と聞いて、ただではとおさじと勢いづく様子に若さがあふれ、花道を六方を踏みながら引っ込む姿や、再び花道を走り出てくるときの表情は力強く、全身で気迫を表している様子に圧倒されるよう。いやいや、とても65歳とは思えないわ。

対する芝翫の桜丸。芝翫のこういう隈の顔って初めて見たかも。立ち役をするとしても若衆とかがほとんどの人だから、とても珍しいと思う。それが不思議と似合っていてるんだな。今時の若者と違って顔が大きいからこういう化粧が映えるんだろうなあ。何とも古怪な味わいがあって面白かった。
顔はともかく、芝翫はほとんど何もしない。普通の役者だと、桜丸は既に切腹する覚悟を決めていてその哀しさを表す素振りをするものだが、芝翫は、もちろん梅王と手を取り合って泣いたりはするのだが、すごく淡々とした風情でそれがかえって桜丸の諦念を表しているかのようで、横にいる大きな吉右衛門の梅王に存在感で全然負けていないのだからやっぱりすごい役者さんである。

松王は幸四郎で、この場では憎まれ役だが、こちらも梅王丸に劣らず気迫のこもった様子でさすがに立派。

だがこの幕いちばんの見物は富十郎の時平公で、普通は青隈をとるところをそうはせずに白塗りで、王子の鬘でいかにも国崩しの悪人風。その姿で、梅王丸桜丸を睨み付け威嚇する様子がそれはそれは大きくて兄弟が圧倒されるのも無理ないような迫力。声も朗々と響いて力強くて、いやはやほんとにお元気だわ~。

四人揃った様子はまさに錦絵のようで、さよなら公演に相応しい力の入った舞台を堪能させていただいた。

三・京鹿子娘道成寺
勘三郎の花子、團十郎の大館左馬五郎

襲名公演以来の勘三郎の道成寺。この人の踊りが超一流なのはいまさら言うまでもない。始めから終わりまで弛緩なく、美しく、切れも良く踊り続ける様子はほんとうに素晴らしい。特に初めの道行での愛嬌のある風情がこの人らしく可愛さがあり、また途中の「恋の手習い」や「山尽くし」の中でも常に意識の先に鐘があるのが感じられるのがさすが。全く当代一流の娘道成寺。

押し戻しがつくのも襲名公演と同じ。團十郎の左馬五郎はまさに荒事らしい力強さを見せてこちらも立派。観ている方も邪気を払われたような気持ちよさ。

所化の舞の講釈は(たぶん)種之助。いちばん若い子だったからそうだと思うけど、違っていたらごめんなさい。種太郎の弟くん。舞台久しぶりじゃないかな?最後までつっかえもせずにちゃんと言えました。
今回も手拭いはもらえませんでした~。

四・与話情浮名横櫛
染五郎の与三郎、福助のお富、歌六の和泉屋多左衛門、錦之助の鳶頭金五郎、錦吾の番頭藤八、彌十郎の蝙蝠安

なんかねえ、染五郎と福助って言うコンビが似合わないのよ。もちろん芝居では、女形の方が年上のカップルなんて言うのは珍しくはないんだけど、どうもこの二人だと釣り合いが悪くて、特にはじめの見染めの場なんかが、若い二人が一瞬にして恋に落ちた純粋さより、色年増に引っかけられた世間知らずのぼんぼん、みたいに見えちゃうんだなあ。

でも一人一人は決して悪くない。
染五郎は見染めではいかにも育ちの良い若旦那という様子が見え、源氏店でも身を持ち崩してはいても失わない性根の良さがあるのがよい。眼目の名台詞も上手く聞かせてなかなか。
大顔合わせばかりの今月、一人若手で主役をもらった責任はきっちり果たしていた。

福助は見染めではやくざの妾らしいあだっぽさがあり、源氏店でも、観る前はもっと悪婆みたいに行儀悪くなるかと危惧していたがそうでもなく、色気は見せながらもわずかに陰も見せ、また蝙蝠安には気っ風の良いところも聞かせ、となかなかの出来。

歌六の多左衛門に懐の深さがあってさすがに立派。歌六はこういう律儀な役が本当に上手い。味があって渋くて良い役者さん。でもこの多左衛門って不思議な人なんだよね。なんで3年も真実を明かさなかったのか…。

彌十郎の蝙蝠安に小悪党の嫌らしさと可笑しさがあって上々。
錦吾の藤八は、あまり羽目を外さずきっちりとした出来でこの人らしい。
錦之助の金五郎に鳶頭らしい颯爽とした風情があり気持ちよい。

追記
いまだに歌舞伎座のHPに3,4月の公演がアップされないので、ご参考までにチラシを載せておきます。
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