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六月大歌舞伎・夜の部 [舞台]

6月23日 歌舞伎座

二日続けて歌舞伎座通い。今日はテレビの収録があるらしく、1階席後ろにはカメラがずらり。入り口受付には高麗屋の奥様、染ちゃんの奥様も、今月は大変でしょうね、気が張って。

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一・門出祝寿連獅子 四代目松本金太郎初舞台
政治の世界では世襲制限の話が話題だったが、歌舞伎の世界では今や世襲は当たり前を通り越してめでたいことのようだ。純粋培養や、子供の時からの御曹司扱いが良いのか悪いのか、どちらとも言えないだろうが、一歌舞伎ファンとして、役者として小さな一歩を踏み出した金太郎の未来に幸あれと祈りたい。それが真っ直ぐ歌舞伎の隆盛につながっているのは間違いのないことだから。

4つになったばかりという金太郎、自分がやっていることをどれほど理解しているのかわからないが(大きくなってから覚えているだろうか?)、祖父に手を引かれて花道を登場したときから小さいなりにオーラを発揮していて、父、祖父と共に一生懸命それらしく踊って見せて微笑ましい。後見の錦吾が緊張気味なのも初舞台ならでは。後段の毛振りも懸命に見せて大きな拍手をもらっていた。申し訳ないが、誰も幸四郎と染五郎の毛振りなんて観てなかったんじゃないかな(苦笑)。はい、少なくとも私は金太郎ちゃんばっかり観てしまいました。

口上には親戚の吉右衛門、松緑、芝雀を初め、梅玉、魁春、福助と揃う、さすが高麗屋、豪華な初舞台だった。

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二・極付 幡随長兵衛
吉右衛門の長兵衛、芝翫のお時、仁左衛門の水野、梅玉の唐犬、歌六の出尻、東蔵の近藤、玉太郎の長松

吉右衛門それこそ極めつけの長兵衛が悪かろうはずもなく、まさに期待通りの素晴らしい出来。
序幕での無体な侍をやっつけるところの大きさ、文字通り胸がすくような気持ちよさにまずうっとり。
この日の席は1階通路近くで、客席から登場の播磨屋がすぐ横を通ってくれて、おおこんなに近くで観たのは初めて、と感激(笑)。

二幕目では死を覚悟した腹の据わった様子を見せつつも、残された妻子や子分たちを気遣う嘆きが胸を打ち、万感をこめた「人は一代名は末代」の名台詞が圧巻。着替えをしながらのお時との無言の別れのやり取りが切なく、息子への遺言が泣かせる。
何度も観ている演目だが、自分一人の命のことならかまわない侠客であっても、夫であり父でもあればただ無謀に捨てに行くわけではないと言う当たり前のことをいまさらながら痛感させられた、吉右衛門の懐の深さ、暖かさだった。

三幕目では、既に覚悟を決め、堂々とした様子が、旗本たちを圧倒する大きさ。でも何度観てもこの幕は、水野たちの奸計がいやらしくて、後味が悪くて仕方がない。

その水野は仁左衛門が付き合う。やっていて気持ちの良い役ではないだろうが、さすがに旗本の殿様らしい格を見せて立派。でもこういう悪巧みをやりそうに見えないのよね、仁左衛門だと。最後の長台詞もなんだか綱豊卿みたいで(苦笑)。

女房お時は芝翫で、侠客の女房らしい腹の据わった様子と、夫を見送る切なさを見せて情のある風情がさすがに立派。

劇中劇の坂田公平役の歌昇が、いかにもそれらしい雰囲気でなかなか。
歌六がちょっと間抜けな出尻清兵衛だが、いささか真面目すぎるかも。
梅玉の唐犬権兵衛は手に入った風情。
児太郎が劇中劇の伊予守役で出ていたが、台詞の棒読みもいいところで、成駒屋の御曹司として先が心配になってしまう。もう子役じゃないんだろうから、もうちょっと何とかしないと。

三・梅雨小袖昔八丈 髪結新三
幸四郎の新三、福助の忠七、高麗蔵のお熊、染五郎の勝奴、歌六の弥太五郎源七、彌十郎の家主、萬次郎の家主女房、錦吾の車力善八

幸四郎二度目の新三。ううん、どこがどう悪いと言うほどのことはないのだが。やっぱりニンじゃないんだなあ。こういう重量級の役者がやる役じゃないのよ。序幕からあからさまに悪人面なのもおかしいし、例によって愛嬌もないから勝奴や家主とのやり取りで笑わせるところも、無理してるのが見えてしまい、なんだか調子が乗らない。何となく観ていて疲れる。でも不思議と本人は楽しそうなんだよね。

福助の忠七がきちんとしたお店者の風情でなかなか行儀の良い出来。女形だと過剰な演技をしがちな人だが、こういう役の方がいいのかも。
染五郎の勝奴に軽快さがあって上々。
彌十郎の家主、萬次郎の家主女房が老獪で強欲な様子を良く出して笑わせた。
歌六の弥太五郎源七も、親分らしい風格と貫禄があり、とは言え盛りを過ぎた侘びしさものぞかせて立派。こういう役をやる歌六が、先代の権十郎のような味わいが出てきた気がして嬉しい。
錦吾の善八に実直な味がありなかなか。

夜の部は時間も長かったし、三つとも黙阿弥ものというのもいささか首を傾げたくなる演目立て。昼のと一つくらい入れ替えるとか出来なかったのかしら。
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nori

以前にコメントさせていただいたことのある大阪在住の団塊世代男性です。コメントは久しぶりですが、いつも楽しく記事を見せていただいています。大阪や京都での歌舞伎、文楽公演についての記事は私の観たものが多いので、参考になります。今月、久しぶりに歌舞伎座に行き、夜の部を観ました。幸四郎、吉右衛門、歌六についての感想に私も同じような印象を受けました。今後も記事を楽しみにしております。
by nori (2009-06-26 00:44) 

mami

noriさん、お久しぶりです。コメントありがとうございます。

今月は昼夜とも見応えのある舞台で、わざわざ大阪からお越しになった甲斐があったのではないかと思います。
来年4月まで歌舞伎座さよなら公演は続きますので、またご覧になる機会があればいいですね。

勝手に思ったことを書いているだけなので、「参考になる」なんて言われるとお恥ずかしいですが、これからもよろしくお願いします。
by mami (2009-06-26 23:26) 

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