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新橋演舞場五月大歌舞伎・昼の部 [舞台]

5月24日

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一・祇園祭礼信仰記 金閣寺
吉右衛門の松永大膳、染五郎の此下東吉・実は真柴久吉、芝雀の雪姫、錦之助の鬼藤太、歌六の十河軍平・実は佐藤正清、福助の狩野之介直信、吉之丞の慶寿院尼

吉右衛門の東吉は観たことがあるが大膳は初めて。さすがに余裕のある国崩しの悪人ぶりで、大きさもあり、ふてぶてしくも何とも言えない色気があって、魅力的。女としては、なよなよした直信よりこっちに惚れてしまいそう(笑)。天下を狙う大悪人ながら、碁に興じ、女を口説く、ある種の稚気が無理なく感じられるのが良い。時代物の悪人にはこういうおおどかさがないと、舞台がせせこましくなってしまう。

芝雀の雪姫は、美しく、楚々とした雰囲気がぴったり。前半の大膳に迫られて苦悩する様子、大膳が父の仇と知って討とうとするところなども、雪姫の心情がよく表れて立派。
爪先鼠の場面は珍しい人形振り。正直言うと、これに限らず歌舞伎の人形振りって好きではない。せっかく生きた役者がやるのに人形の真似をして何が面白いの、とか思ってしまう。第一、文楽の人形の方がよっぽど綺麗だし。文楽を観ない人には物珍しい趣向かもしれないが。芝雀には次回はぜひ普通に演じて見せてほしいと思う。
ここで面白かったのは、この場面だけ雪姫の髪飾りが増えて、額の前にひさしのように突き出すものがついていたことで、どうやら顔に花びらが降りかかるのを防ぐためのよう。他の人も同じだったか記憶にないが、確かにこの場面、上から降ってくる花びらの量が半端じゃない。途中雪姫も黒衣もよく見えないくらいだもの。芝雀さんは汗っかきなので、後で見るとうなじに花びらがたくさんついていた。

染五郎の東吉は爽やかで知恵者の様子が十分。まあ大膳に位負けしてる気はするが、相手が吉右衛門ではいたしかたないか。
福助の直信はやや優男過ぎる感あり。
吉之丞が短い出番ながら、さすがに品のある様子。
錦之助、歌六が手堅い出来。

二・上:心猿
  下:近江のお兼
福助による変化舞踊。福助は吉右衛門と共演するときはいつも行儀がいいのだが、今月は一緒に舞台に出ていないせいか、悪い癖が出て下品になりがち。それでもこれはまだ、夜の部の七役の怪演に比べれば、台詞がないぶんだけ大人しいかも。
心猿ではぬいぐるみのような被りものを被って踊るのが可愛い。 
お兼では踊りに切れがあり、さらしの扱いが綺麗。あれって結構腕の力が要りそう。
心猿での白い神馬が、早変わりで栗毛に変わるのも面白かった。

三・らくだ
吉右衛門の久六、歌昇の半次、歌六の家主、段四郎の家主女房、高麗蔵の半次妹おやす、由次郎の馬吉
吉右衛門初演とのこと。吉右衛門も歌昇も芝居は上手い。吉右衛門はのろくさそうな屑屋が酒を飲んで気が大きくなる変化がさすがに魅せる。歌昇も遊び人の気のいい男の風情を上手く出している。だが二人とも、柄じゃない役を一生懸命演じている、という風が見えてしまって、見ていていささか痛いというか辛い感じが拭えないので、例えば去年の三津五郎と勘三郎の時のように腹の底から大笑いをする、と言う感じではない。もちろんそれは、普段省略される最後の落ちが元通り演じられて、苦い終わり方をすることとも関係するのだろうが、なんだか観ていて疲れてしまった。
歌六と段四郎の家主夫婦にしても、もう少し羽目を外してやってもいいくらいだと思うが、変に行儀がいい。
全体的にこういう世話物に必要な「軽さ」が足りない気がした。こればっかりは役者の技量と言うよりニンだからしょうがない。


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