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国立劇場3月花形若手歌舞伎公演 [舞台]

3月23日

通し狂言 新皿屋舗月雨暈 (しんさらやしきつきのあまがさ)
  -お蔦殺しと魚屋宗五郎-

序幕  磯部邸弁天堂の場
     同    お蔦部屋の場
二幕目 磯部邸井戸館詮議の場
三幕目 片門前魚屋宗五郎内の場
四幕目 磯部邸玄関先の場
      同 庭先の場

愛妾お蔦/宗五郎女房おはま  片岡 孝太郎
魚屋宗五郎             尾上 松 緑
浦戸紋三郎/小奴三吉      坂東 亀 寿  
召使おなぎ             中村 梅 枝
鳶吉五郎              中村 萬太郎
岩上典蔵              片岡 亀 蔵
磯部主計之介           大谷友右衛門
家老浦戸十左衛門        坂東 彦三郎

通常「魚屋宗五郎」として通っている黙阿弥作品の、本来あった前段をつけての通し上演という珍しい試み。「魚宗」では、召使いおなぎが語る、お蔦が殺されたいきさつが見せられるわけであるが、それだけではなく、旗本の主計之介と町人の宗五郎という二人の酒乱の酔態を見比べるという趣向もある。

主演の孝太郎、松緑ともに初役だが、楽日も近いせいもあって二人とも落ち着いた演技を見せた。
孝太郎はお蔦とおはまという対照的な二役だが、まずお蔦では殿様の愛妾らしい色気と美しさがあり、無実の罪で殺される哀れさはかなさを見せてなかなか。一方のおはまは、江戸の下町のおかみさんという、上方歌舞伎の女形とはスタイルの違う役だが、松緑との息もよくあって、テンポのよい掛け合いを見せ、口ではポンポン言いながら、宗五郎を案じる優しい気の良い様子をしっかり出して上々の出来。

松緑も、花道の出から沈んだ様子を上手く出し、前半は道理をわきまえた風情が、酒を飲んで一変していく様をなかなか上手く見せて大健闘。もちろんだんだん酔いが回ってくる様子とか、まだまだの部分もあるけれど、宗五郎の性根である、お蔦をいわば金で売った後ろめたさをしっかり感じさせたのは立派。
またこの人は、あまり誰も言わないけれど、踊りが上手いせいか手の使い方がきれいだと思う。何気なく着物の裾をはたいたり、湯飲みを置いたり、あるいは暴れるときでも無駄に振り回してるように見えなくて颯爽としているのがいいところ。

梅枝のおなぎも健闘。「お蔦部屋の場」では召使いとして甲斐甲斐しく世話を焼く健気な様子を見せ、「宗五郎内」では、お蔦の無念を伝える難しい立場を行儀良くこなして立派。
亀蔵の岩上典蔵は、ちょっと三枚目寄りで残虐さが弱い気がしたが、まあ、猫にじゃれつかれて重宝の茶碗を落っことしてしまうようなおっちょこちょいの男ではあるので、許容範囲。
友右衛門の主計之介は、あまり酒乱という感じが見えないのがいささか難。
亀寿の三吉は調子の良い雰囲気は出したが、ちょっと空回りの感もあり。

お蔦殺しの顛末を見せることによって、お蔦だけでなく主計之介も岩上らにはめられての手討ちだったことがわかり、幕切れの「謝って金さえ出せばいいのか」という後味の悪さは多少は軽減されたが、そうなればなったでよけいにお蔦が哀れに思えるのも事実で、いやはや酒に溺れる人間は恐ろしいという説教話のように思えなくもない。

この日は終演後「アフタートーク」があり、落語家の林家きく姫さんの司会で松緑と孝太郎の話を聞くことが出来た。まず松緑が黒いシャツに紫のネクタイ、黒のハットといういでたちで登場。派手!一方の孝太郎はチェックのシャツにジーンズというフツーの格好(笑)。オンの話、オフの話、いろいろあったけど、面白かったのは孝太郎さんが子供が産まれて嬉しくて毎日抱っこしていたら二の腕が太くなって、「父に、体の線がきれいじゃないから痩せろ!と怒られました」という話とか、松緑さんは運転免許を持ってない「みんなに止めとけって言われるので」とか、あっという間の約40分だった。孝太郎と松緑のコンビはあまり今までなかったような気がするが、今回なかなか息のあった様子だったし、これからもこの組み合わせで見られるといいなと思った。

劇場前のお庭にはもう桜が3分咲きくらい。
090323a.jpg小松乙女

090323b.jpg神代曙

090323c.jpg駿河桜 ぼけてますね。白っぽいお花です。
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