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團菊祭五月大歌舞伎・昼の部 [舞台]

5月25日 歌舞伎座

一・義経千本桜
    渡海屋
    大物浦
海老蔵の知盛、魁春の典侍の局、友右衛門の義経、権十郎の相模五郎

昨年は、幸四郎、仁左衛門で観た演目である。それを花形歌舞伎の類ならともかく、歌舞伎座の本公演で海老蔵にやらせるというのはちょっと無理があるんじゃないか。と観る前はかなり危惧していたが、予想よりはずっと良かった。
初めの銀平として鎌倉方の二人をあしらうところは、すっきりし過ぎていて恰幅の良さが感じられず苦しいところ。格好いいのはいいが、なにしろ若すぎて船問屋の主という大きさが見えない。
衣装を改めた後も、出陣前は丁寧にやってはいるがそれほど印象は強くない。だが瀕死の傷を負って戻ってきてからは真骨頂というか、メークも手伝ってあの眼力を効かせて迫力は満点。例によってやりすぎのきらいはあるし、相変わらず台詞廻しは拙くて、ところどころ意味不明になってしまっているのだが、とにかく文字通り命を懸けて天皇を守ろうとする様子はひしひしと伝わってきた。だからこそ天皇の「仇に思うな」との言葉に心が折れて、義経に対し「あらうれしや、昨日の敵は今日の味方」という姿に真情が見えた。ここのところは去年の幸四郎より優れていたように思う。

魁春は終始丁寧な演技。銀平女房お柳としてはいささか上品が過ぎる感じもするが、その分、典侍の局への変化は自然で無理がない。義経らに、銀平が日和を見るのに長けていると自慢するところは、落語のように一々体の向きを変えていたが、ちょっと煩わしい感じもしないではない。局に戻ってからは安徳帝への敬意というより愛情が溢れるようで、乳の人としての威厳という点では弱い気もするが、帝への切々とした思いが感じられて、こういう典侍の局もありかと納得した。

義経の友右衛門、弁慶の團蔵以下、男女蔵、亀寿、亀鶴、松也の四天王、権十郎の相模五郎、市蔵の入江丹蔵と周りもいささか小粒ながら水準の揃った出来。

二・喜撰
三津五郎の喜撰法師、時蔵のお梶
踊り上手の三津五郎の喜撰、期待通りの一幕。身のこなしの軽さ、動きの良さ、どれをとっても一級品だが、何より軽妙ながら下品にならない味わいが良い。一つ間違うと、下卑たエロ坊主になりかねないのを、あくまで楽しげに爽やかに踊りきったのはお見事。
時蔵のお梶も、上品な色気を見せてすっきりした味わい。

三・極付 幡随長兵衛
團十郎の長兵衛、藤十郎のお時、菊五郎の水野十郎左衛門、梅玉の唐犬権兵衛、三津五郎の出尻清兵衛

團菊祭らしい大顔合わせ。
幡随院長兵衛は吉右衛門の当たり役の一つなのでどうしても比べてしまうのだが、團十郎もいかにも親分という貫禄十分で気っ風の良さもあり、大きさもあり、立派な出来。ただ團十郎の場合、親分とは言え町人の風情に欠ける気がし(長兵衛は元武士としても)、特に最後の水野邸での場面などはなんだか大分武張った雰囲気ではあった。

付き合う菊五郎は、悪役であり気持ちの良い役ではないだろうが、さすがに立派。

出色は藤十郎のお時で、親分のおかみさんとしての貫禄も十分、また長兵衛の着替えを手伝いながら、まつり糸を取ったりするふとした仕草に愛情と悲しみを伝える様子が、ごく自然でありながら切々と訴えるものがありさすがの出来。

三津五郎の清兵衛に軽みがあり、梅玉の唐犬も颯爽とした味と貫禄を示して上々の出来。
松緑、海老蔵他子分も揃う。
玉太郎の長松がのびのびやっていて可愛い。

でも誰がどうやっても最後は後味の良くない芝居ではあり、正直言うと打ち出しには観たくないといつも思う。
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