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最近読んだ本 [読書]

他諺の空似   ことわざ人類学

他諺の空似 ことわざ人類学

  • 作者: 米原 万里
  • 出版社/メーカー: 光文社
  • 発売日: 2006/08/24
  • メディア: 単行本


昨年亡くなった米原さんの遺作となった本。世界各地にあることわざ・格言の共通性を探りながら、時事批評へつなげていくのだが、そのつなぎかたがいささか強引な気もし、また小咄の類がシモネタばかりというのも、月刊誌の連載で一つずつ読むには良いかもしれないが、こうしてまとめられたものを読むと多少辟易するのも事実。これが遺作となったのは本人も不本意だったのではないかと思う。

ある家族の会話

ある家族の会話

  • 作者: ナタリア ギンズブルグ
  • 出版社/メーカー: 白水社
  • 発売日: 1997/10
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)


ギンズブルグの本が読みたくて、じゃなくて訳者の須賀敦子さんの文章が読みたくて読んだ本。須賀さんのエッセーの類はほとんど読んじゃったので。
作者のギンズブルグの幼少時代からの、ユダヤ系イタリア人一家の歴史をつづったもので、第二次世界大戦前からのユダヤ人の困難は想像に難くないが、そういったことは彼女の夫の死も含めて意外なほど淡々とした表現に抑えられ、読後印象に残るのは、時に反発しあいながらも深い絆で結ばれた家族の愛情である。
須賀さんの訳もやはり名文で、ユーモアとアイロニーとの混ざった会話がお見事。

フレッド・アステア自伝 Steps in Time

フレッド・アステア自伝 Steps in Time

  • 作者: フレッド アステア
  • 出版社/メーカー: 青土社
  • 発売日: 2006/10
  • メディア: 単行本


自伝とは言っても、80代まで生きたアステアが50代半ばで書いたものなので、いわば半生記。子供時代から姉と組んでボードヴィルに出ていた頃から、ブロードウェイでの成功を経て、ハリウッドに進出して大スターとなったところまで。人柄なのだろう、苦労話も成功話もさらりとしていて、ゴシップも人の悪口も出てこない。映画のアステアを思い起こさせる優雅で清潔な自伝。さりげなく挿入されたエピソードも楽しく、「トップ・ハット」の撮影中に起こったジンジャー・ロジャースのドレスを巡る事件など笑えるものも。これを読んでいたら、猛烈にアステアの映画が見たくなってしまった。それにしてもなぜ書かれて50年以上たった今頃訳書が出たんだろう?

ローマ人の物語〈11〉―終わりの始まり

ローマ人の物語〈11〉―終わりの始まり

  • 作者: 塩野 七生
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 2002/12/11
  • メディア: 単行本


第1巻からずっと読んでいたこのシリーズ、なぜか数年前から滞っていたら去年出た最新刊で集結とか。早く読まなきゃ。
いわゆる「五賢帝」最後のマルクス・アウレリウス時代からを「終わりの始まり」とする。正直言ってこのあたりからはよっぽどローマ史に詳しい人以外はよく知らない話だと思う。なので繰り広げられる「塩野史観」が通説とどう違うのかはわからないが、勢いある文章でぐんぐん読ませてくれる。ローマ史を通じて危機管理とは何かを考えさせる、このシリーズに一貫した態度はここでも顕著だ。それにしても塩野さんって、ほんとにユリウス・カエサルが好きなんだなあ、と改めて思う。何かというと、「カエサルは」、「カエサルの時は」、と比較しているもの。

旅の時間

旅の時間

  • 作者: 吉田 健一
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2006/12/09
  • メディア: 文庫


題名から何となくエッセーかと思ったら連作短編集だった(笑)。
吉田健一の文章は、近頃のすらすら読める作家のに慣れた軟弱な頭には、かなり読みづらい。なにしろ句点がほとんどなく、とても息の長い文が続くので、咀嚼が大変。でもそこが面白くもあるのだけれど。たまには頭の体操しなきゃね~、と思い知らされる。
この本は、京都、大阪、神戸、パリ、ニューヨークなどを舞台に、旅人のちょっと不思議な体験を描いた短編集で、旅人と言っても駆け足の観光客ではなく、吉田を思い起こさせる、その地に造詣の深い人物のその土地への印象も話の中で大きな割合を占め、幻想的ながらもあってもおかしくないと思わせる話が綴られている。作家としてだけでなく、一級の文化人として知られた吉田らしい作品。


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